小説読後の記録棚

宇谷が小説を読んで抱いた感想を書いていきます。

『狩人の悪夢』 有栖川有栖

情報

火村英生シリーズ長編

大ヒットホラー作家、白布施との対談がきっかけで彼の家を訪問することになった有栖川有栖。必ず悪夢を見るという部屋に泊まった翌日、白布施の元アシスタントが住んでいた家で右手首のない死体をアリスは発見する。


感想

手首のない死体、死者の訪問理由、行方の分からない容疑者、と最初から謎が多いのに読んでいくと更に謎が増えていき、アリスと一緒に「どういうこっちゃ」と言いたくなる(笑)。今回は情報整理して推理しながら読んでやろう!と意気込んでいたから時間がかかってしまった(結局推理は全然出来んかった)。

最後の謎解き部分は数行読んでから「え、つまりどういうことや?」となってまた戻って読み直して…なんかを繰り返してしまい…。探偵がロジカルに犯人を射止めていく中「や、やばい…全然頭整理できひん…!」と別の意味でヒヤヒヤしてました(笑)。


帯にやれ「俺が撃つのは人間だけだ」だの、「私にとっては“狩り”です」だの書いてあって火村英生の過去に焦点が当たったりするのか?と構えていたけれど、そこまでの掘り下げは無かった。今回言及されていたのはタイトルにもある通り、火村がいつも見るという『悪夢』について。

悪夢。最近見た悪夢は、起きたら出勤時間で、会社に遅れる旨を電話しないといけない、というものだった。本当に、本当に重い気持ちでいざ電話、というタイミングで目が覚めて、すぐに夢と気づかずめちゃくちゃ焦ったな…。今いるここが夢か現か分からない、ということを表現する言葉があったりするけれど、それって本当に怖いことよなぁ。なんてことをしょうもない悪夢でも思ったり。エピローグでの火村とアリスの会話はとても良かった。


茶目っけのあるおじさま(というのは失礼かしら)が好きなので二人の会話の応酬がとても楽しかった。お前にも出来る、できた、の部分は最高でしたな(絶対分かる人には分かると思う、というか刺さる人多いだろ、あれ)。

地の文と「」で会話するのずるくないです?